📖 経理の解説
簿記の試験で差がつく電卓のメモリー機能 — M+・M-・MR・MC・GTの使い方
結論: 電卓には「数字の置き場所」が3つあります
電卓のメモリー機能とは、計算の途中の数字を、電卓の中に置いておくための場所のことです。
〈数字の置き場所〉
- 画面 … いま見えている数字
- メモリーBOX(独立メモリー) … M+ で足して、M- で引いていく、数字の置き場所
- トータルBOX(GTメモリー) … 「=」を押して出した答えの数字がたまっていく置き場所
「画面」の数字は見えていますが、あとの2つは中が見えません。この記事内では、その見えない置き場所のことを「BOX」と呼びます。
〈メモリーBOXとトータルBOXの違い〉
トータルBOX へは「=」を押して出した答えの数字を足していくことしかできませんが、メモリーBOX では M+ で足して、M- で引くこともできます。
メモリー機能が使えると、紙に「750」「1,140」「2,400」…とメモしていく代わりに、BOXへ数字を入れて最後に「いくらになった?」と呼び出せば、合計が出てきます。メモを取る手が止まらない分、計算が速くなります。
まずは一覧で — 5つのキーの役目
メモリー機能のキーは、次の5つです。まず全体をながめてから、1つずつ見ていきましょう。
| キー | 読み方 | やること |
|---|---|---|
| M+ | メモリープラス | いまの数字を、メモリーBOXに足す |
| M- | メモリーマイナス | いまの数字を、メモリーBOXから引く |
| MR | メモリーリコール | メモリーBOXの中身を画面に呼び出す |
| MC | メモリークリア | メモリーBOXの中身を消す |
| GT | グランドトータル | トータルBOXにたまった総合計を出す |
ポイントは、M+ / M- / MR / MC の4つはメモリーBOXを使い、GT だけはトータルBOXを使うということです。
M+ と M- — メモリーBOXに足す、メモリーBOXから引く
ここからしばらくは、メモリーBOX の話です。M+ / M- / MR / MC の4つが、このBOXを使います。
M+ は、画面に出ている数字をメモリーBOXに足します。M- は、逆に引きます。
たとえば、100 と 250 と 80 を足したいとき。
| 押すキー | メモリーBOXの中身 |
|---|---|
| 100 → M+ | +100 |
| 250 → M+ | +100と+250 |
| 80 → M+ | +100と+250と+80 |
| MR(呼び出す) | 430 |
「+」と「=」でも同じ答えになりますが、メモリーBOXが便利なのは途中で別の計算をはさめるところです。M+ で足しておいた 430 は、そのあいだも消えずに残っています。
M- が活躍するのは、足したものから、あとで差し引く場面です。売上から返品を引く、といったときです。
【ここが核心】MR と MC のちがい
メモリーBOXで、いちばんつまずきやすいのがここです。名前が似ているので、混同しやすいんですよね。
1文字目の M はどちらも「メモリー」。ちがうのは2文字目です。
| キー | 2文字目の意味 | 押したあと、中身は? |
|---|---|---|
| MR | R = Recall(呼び出す) | 残る |
| MC | C = Clear(消す) | 空になる |
MR は、メモリーBOXの中身を画面に映して見せてくれるだけです。写真を撮って見せてくれるようなもので、元の中身はそのまま残っています。だから MR は何回押しても大丈夫ですし、呼び出した数字をそのまま次の計算に使うこともできます。
いっぽう MC を押すと、メモリーBOXは空っぽになります。もう呼び出せません。
この「MRでは消えない」が腑に落ちると、メモリー機能はぐっと使いやすくなります。
トータルBOX は、メモリーBOX とは別の置き場所です
GT(グランドトータル)キーは「総合計」。「=」を押して出した答えが、自動的にたまっていく——その置き場所がトータルBOXです。
大事なのは、トータルBOX は、M+ で使うメモリーBOX とは別ものだということ。MC を押してもトータルBOX は消えませんし、M+ で足した数字はトータルBOX には入りません。
| 押すキー | 画面 | トータルBOXの中身 |
|---|---|---|
| 150 × 5 = | 750 | 750 |
| 380 × 3 = | 1,140 | 750 と 1,140 |
| GT | 1,890 | 合計 1,890 |
「掛け算した答えを、そのまま合計したい」ときは、GT のほうが押すキーが少なくて済みます。M+ を押す手間すらいらないのが GT の持ち味です。
ただしトータルBOX は、「=」を押すたびに勝手にたまっていくのがくせもの。前の計算の答えが残ったままだと、合計が合いません。使う前に空にしておく、という一手間が要ります。
簿記の試験でどう使うか
メモリーBOX が効いてくるのは、「計算 → 計算 → …のあと、ぜんぶ合計する」形の問題です。簿記だと、たとえばこんな場面です。
- 商品有高帳や売上の集計で、単価 × 数量 をいくつも足し合わせるとき
- 合計試算表や精算表で、いくつもの金額を縦に合計するとき
- 減価償却などで、途中で別の計算をしながら、合計は保っておきたいとき
「単価 × 数量」を3つ合計する例を見てみましょう。
| 商品 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| A | 150円 × 5個 | 750 |
| B | 380円 × 3個 | 1,140 |
| C | 1,200円 × 2個 | 2,400 |
| 合計 | — | 4,290 |
これを、メモリーBOX を使わずにやると、750・1,140 と紙にメモしてから最後に足すことになります。メモリーBOX を使うと、こうなります。
| 押すキー | メモリーBOXの中身 |
|---|---|
| 150 × 5 M+ | +750 |
| 380 × 3 M+ | +750と+1,140 |
| 1200 × 2 M+ | +750と+1,140と+2,400 |
| MR | 4,290 が画面に出る |
ここで気づいてほしいのが、「= を押していない」ことです。多くの電卓では、M+ が「=」の役目もかねていて、途中の掛け算を確定してから、その答えをメモリーBOXに足してくれます。だから 150 × 5 M+ は、5 ではなく 750 が足されます。
メモを取らない、= も押さない。この積み重ねが、試験のときの時間の余裕になります。1問ずつは小さな差でも、集計の多い問題では効いてきます。
150 × 5 = M+ のように、いったん「=」を押してから M+ を押しても同じ結果になります。まずはお手元の電卓で 150 × 5 M+ MR と押して、750 が出るかを確かめてみてください。
よくあるつまずき
① M+ を押したのに、合計が合わない
多いのが、前の計算がメモリーBOXに残っていたというケースです。画面のすみに「M」が出ていたら、中身が残っている合図。新しい問題に入る前に MC を押して空にしておくと、この事故は防げます。
もうひとつは、上で触れた「M+ が掛け算を確定する」動きを知らずに、150 × 5 のつもりが別の数字を足していた、というケースです。一度 MR で中身を確かめてみると、どこでずれたか分かります。
② 画面の数字を消したくて AC を押したら、トータルBOX まで消えてしまった
多くの電卓では、AC(オールクリア)は画面と計算の途中に加えて、トータルBOX の中身も消します。「一度画面をきれいにしてから、GT で合計しよう」とすると、肝心の合計が消えていた——という順番の事故です。
逆に言うと、GT を使う前に AC を押しておけば、前の計算が混ざりません。「AC で空にしてから、= を重ねて、最後に GT」がきれいな流れです。
③ AC を押したのに、メモリーBOX が消えない
これは故障ではありません。AC で消えるのは、画面の数字とトータルBOX です。メモリーBOX は残ります。メモリーBOX を消せるのは MC だけ、という電卓が多いためです。「M」の表示が残っていたら、MC を押してください。
| 押すキー | 画面 | メモリーBOX | トータルBOX |
|---|---|---|---|
| C | 消える | 残る | 残る |
| AC | 消える | 残る | 消える |
| MC | そのまま | 消える | 残る |
中身が見えると、こわくなくなります
🍋 「見えるメモリー電卓」で目で確かめる
ここまで文章で説明してきましたが、メモリー機能がこわいのは、結局のところ 中身が見えないからだと思うのです。押した結果が正しいのか分からないまま進むのは、落ち着かないですよね。
そこで、メモリーBOX の中身が見える電卓を作りました。M+ を押すとレモンがBOXに落ちて、MR でひとつにまとまり、MC で空っぽになる。MR では消えないことを、目で確かめられます。
慣れてきたら「🎓 卒業モード」でBOXを隠せます。中身が見えなくても、頭の中で想像できるようになったら——それが本物の電卓を使える状態です。
シトロン式 見えるメモリー電卓を使う(別タブ) →まとめ
- 電卓には数字の置き場所が3つあります。画面・メモリーBOX・トータルBOXです。
- M+ でメモリーBOXに足し、M- で引きます。多くの電卓では、
150 × 5 M+のように掛け算を確定してから足してくれます。 - MR は「見るだけ」で、中身は残ります。消えるのは MC を押したときだけです。ここが分かると、安心して MR で中身を確かめられます。
- トータルBOX はメモリーBOX とは別の置き場所で、「=」で出した答えがたまっていきます。GT キーで呼び出します。
- 多くの電卓で、AC はトータルBOX を消しますが、メモリーBOX は消しません。メモリーBOX を消すのは MC です。
- 新しい問題に入る前に MC と AC で空にしておくと、合計が合わない事故を防げます。
- 簿記の試験では、単価 × 数量をいくつも合計するような場面で効いてきます。使いこなせると、その分の時間が生まれます。
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