消費税1%で飲食店の納税額はどうなる?
仕入れと売上を数字で比較
2026年10月時点の情報です。
2027年4月から、食料品の消費税率を8%から1%に引き下げる案が示されています。期間は2029年3月31日までの2年間です。
この税率引下げ案が実施された場合、飲食店にはどのような影響があるのでしょうか。
「食材の仕入れが安くなるなら、お店にとってはうれしい話では?」
そう思うかもしれません。ところが、消費税の計算方法によっては、仕入れにかかる消費税が減ることで、納める消費税が増えることがあります。
この記事では、飲食店の店内飲食とテイクアウトの違い、本則課税と簡易課税の違いを整理し、具体的な数字を使って納税額の変化を考えてみます。
1. 結論:飲食店の納税額は増えることがある
今回の税率引下げ案では、飲食店が販売する商品やサービスによって適用される税率が異なります。
例えば、次のような違いがあります。
- 食材の仕入れ:8%から1%へ
- 店内飲食の売上:10%のまま
- 対象となるテイクアウト・出前の売上:1%へ
- お酒の販売:10%のまま
店内飲食を中心とするお店で、本則課税を適用している場合、食材の仕入れにかかる消費税が減ることで、納める消費税が増える可能性があります。
一方、簡易課税や特例を使っている場合は、計算方法が異なります。
つまり、「飲食店なら一律に納税額が増える」というわけではありません。
まずは、何が1%になるのかを確認してみましょう。
2. 2027年4月から何が1%になる?
2026年10月時点で公表されている案では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率を引き下げる予定です。
| 税率 | 主な対象 |
|---|---|
| 1%(引下げ案) | 食材、酒類を除く飲食料品、対象となるテイクアウト・出前 |
| 8% | 一定の新聞(週2回以上発行される新聞の定期購読) |
| 10% | 店内飲食、お酒、食料品以外の商品など |
※上記は税率引下げ案を前提にした整理です。個々の商品やサービスの扱いは、公式資料で確認してください。
ここで注意したいのは、食べ物を扱っていれば、すべて1%になるわけではないことです。
例えば、同じ料理でも、店内のテーブルで食べる場合と、持ち帰り用として販売する場合では、適用される税率が異なります。
飲食店では、食材の仕入れだけでなく、売上についても税率ごとに管理する必要が出てきます。
現在の8%・10%に加えて1%が加わるため、レジや会計ソフトの設定、請求書やレシートの確認も大切です。
複数の税率を使った計算については、こちらのツールも活用できます。
たしかに、食材を買うときの負担は減ります。
でも、消費税の納税額は、仕入れの金額だけで決まるわけではありません。次は、その仕組みを見てみましょう。
3. なぜ本則課税では納税額が増えることがある?
本則課税では、基本的に、売上にかかる消費税額から仕入れなどにかかる消費税額を差し引いて納税額を計算します。
考え方を簡単にすると、次のとおりです。
例えば、店内飲食の売上が中心のお店を考えてみましょう。
食材の仕入れにかかる税率が8%から1%に下がっても、店内飲食の売上にかかる税率は10%のままです。
その場合、売上にかかる消費税額が変わらない一方で、食材の仕入れにかかる消費税額は小さくなります。
差し引ける金額が減るため、結果として納税額が増えることがあるのです。
ただし、これは本則課税の基本的な考え方です。実際には、テイクアウトの売上やその他の経費、仕入税額控除の対象となる取引なども含めて計算します。
4. 数字で比較!納税額はどう変わる?
架空の飲食店を例に、食材の仕入税率が8%から1%に変わった場合を考えてみます。
ここでは仕組みを理解しやすくするため、次の条件を設定します。
- 本則課税を適用している
- 年間の税抜売上は1,000万円
- 売上はすべて店内飲食で、税率は10%
- 年間の税抜食材仕入れは500万円
- 食材以外の経費などは考慮しない
- 税抜の売上額・仕入額は変わらないものとする
現在と税率引下げ後の比較
| 項目 | 現在(食材8%) | 引下げ後(食材1%) |
|---|---|---|
| 税抜売上 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 売上にかかる消費税(10%) | 100万円 | 100万円 |
| 税抜食材仕入れ | 500万円 | 500万円 |
| 食材仕入れにかかる消費税 | 40万円 | 5万円 |
| 納税額の単純試算 | 60万円 | 95万円 |
この条件では、納税額は60万円から95万円になり、35万円増える計算です。
食材の仕入れにかかる消費税が40万円から5万円に減るため、差し引ける金額も35万円減るからです。
お店のお金の出入りはどうなる?
この例では、食材の税込仕入額も35万円減ります。
そのため、食材の仕入支出の減少分と、納税額の増加分が同じ金額になります。
ただし、これは食材の税抜価格や売上が変わらないと仮定した単純な例です。実際のお店では、仕入価格や販売価格の変更、その他の経費、納税時期などによって資金繰りへの影響が変わります。
また、ここで示した60万円・95万円は、食材仕入れだけを考慮した説明用の試算です。実際の申告では、ほかの経費や取引ごとの税額、控除の要件なども確認する必要があります。
自分のお店の数字で計算してみよう
売上や仕入れの金額が変われば、納税額への影響も変わります。
店内飲食とテイクアウトの売上が混在するお店では、それぞれの金額を分けて考えることも大切です。
→ 飲食店の消費税、1%で納める額は?
| 今 | 2027年4月から | |
|---|---|---|
| 受け取った消費税売上 | ||
| 支払った消費税仕入れ・経費 | ||
| 納める消費税 |
※ 一般課税(本則課税)で計算した目安です。端数処理や、国と地方の内訳は省いています。
※ 簡易課税は売上をもとに計算するため、この計算とは違います。くわしくは税理士・税務署に確認してください。
※ 法案が国会で成立した場合の予定です(国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げに関するQ&A」令和8年9月)。
※計算ツールは、設定された条件に基づく概算を確認するためのものです。実際の申告額を確定するものではありません。
5. 簡易課税・2割特例・3割特例ではどうなる?
ここまで、本則課税の単純な例を見てきました。
しかし、消費税の計算方法は一つではありません。適用している制度によって、税率引下げの影響が異なります。
簡易課税の場合
簡易課税は、一定の条件を満たす事業者が選択できる制度です。
実際の仕入れにかかった消費税額をそのまま差し引くのではなく、売上にかかる消費税額をもとに、業種ごとの「みなし仕入率」を使って納税額を計算します。
今回の税率引下げ案では、簡易課税を適用する場合にも、飲食料品の譲渡に関する計算方法の特例が示されています。
具体的には、1%の対象となる飲食料品の売上について、その売上にかかる消費税額と同額の仕入税額を計上するというものです。
このため、その売上部分については、売上にかかる消費税額と仕入税額が相殺され、納税額が生じない計算になります。
ただし、店内飲食など、ほかの売上については別途計算が必要です。お店全体の納税額がゼロになるわけではありません。
2割特例・3割特例の場合
インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者になった人などには、一定の条件のもとで納税額を売上税額の一定割合とする特例があります。
2割特例は、2026年9月30日を含む課税期間まで適用されます。個人事業者の場合は、2026年分の申告までが対象です。
また、個人事業者には、一定の条件のもとで2027年分・2028年分に利用できる3割特例が設けられています。法人は3割特例の対象外です。
今回の税率引下げ案では、2割特例・3割特例を適用する場合にも、飲食料品の譲渡に関する計算方法の特例が示されています。
簡易課税と同様に、1%の対象となる飲食料品の売上については、売上にかかる消費税額と同額の仕入税額を計上する扱いです。そのため、この売上部分については納税額が生じない計算になります。
ただし、特例を利用できるかどうかは、事業者の状況や課税期間などによって異なります。詳しい条件は国税庁のQ&Aで確認しましょう。
免税事業者の場合
免税事業者は、原則として消費税の納税義務が免除されています。
ただし、税率引下げ案では、飲食料品を販売する免税事業者が課税事業者になるための届出に関する特例も示されています。
仕入れにかかる消費税の還付を受けたい場合など、事業者の状況によっては課税事業者になることを検討するケースもあります。
一方で、課税事業者になると申告や納税などの負担も生じます。
「小さなお店だから免税事業者」「免税事業者なら何もしなくてよい」と決めつけず、インボイス登録の有無や仕入れ・売上の状況を確認することが大切です。
6. 飲食店が今から確認しておきたい4つのこと
税率引下げ案が実施された場合に備えて、今のうちから確認できることがあります。
① 納税資金を確保できるか
納税額が増える可能性がある場合、納税時期に資金が不足しないように準備することが大切です。
売上や仕入れの金額をもとに、税率変更後の納税額を試算してみましょう。
② テイクアウトの価格をどうするか
対象となるテイクアウト商品は、店内飲食と異なる税率になる予定です。
税率が変わったときに税込価格を維持するのか、税抜価格を基準にするのかなど、価格設定についても検討しておくとよいでしょう。
③ レジや会計ソフトの設定を確認する
税率が変更されれば、レジや会計ソフトで扱う税率の設定にも影響します。
店内飲食、テイクアウト、お酒など、取引ごとに正しい税率を選べるか確認しておきましょう。
④ 仕入れの請求書やレシートを確認する
食材だけでなく、光熱費、備品、その他の経費についても、税率や仕入税額控除の扱いを確認する必要があります。
仕入先から届く請求書やレシートを、税率ごとに確認できるようにしておくと、変更時の対応がスムーズになります。
納税額への影響を考える第一歩は、今のお店が本則課税なのか、簡易課税なのか、特例の対象なのかを確認することです。
7. 自分のお店の納税額は税理士・税務署に確認しよう
今回紹介した数字は、税率引下げによる影響を理解するための単純な試算です。
実際の納税額は、売上の内訳、仕入れや経費の内容、課税方式、適用できる特例などによって異なります。
税率引下げ案は、2026年10月時点では法案の成立・施行を前提とした内容です。今後の制度の変更や、具体的な取扱いについても確認が必要です。
判断に迷ったときは、顧問税理士や所轄の税務署に相談しましょう。
最新の情報は、国税庁の公式資料で確認できます。
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消費税の税率が変わると、商品の価格だけでなく、お店の経理や納税資金にも影響する可能性があります。
まずは自分のお店の売上と仕入れの数字を整理して、どのような変化が起こりそうか確認してみましょう。