短歌の句切れとは?
意味の切れ目を見つけてみよう
〜日々、三十一音のひとりごと文藝〜
「いろんな作者の短歌を読んでみたい!」
そう思って短歌を読み始めても、こんな疑問が出てきませんか?
「短歌って、どこで区切って読めばいいの?」「5・7・5・7・7のところで、毎回区切るの?」「句切れって聞いたことがあるけど、何のこと?」
短歌には、「句切れ(くぎれ)」という考え方があります。簡単にいうと、短歌の中で、意味や文の流れの切れ目のことです。
句切れが分かると、短歌が読みやすくなります。どこまでが一つの文なのか、どこから話が変わるのかが見えてくるからです。
そして、読んだときのリズムを楽しめるようになります。同じ31音でも、途中で切れる歌と、最後まで切れない歌とでは、流れ方がまるで違います。
この記事では、句切れの見つけ方を実際の短歌を読みながら、一緒に見ていきましょう。
この記事で分かること
- 句切れとは何か
- 初句切れ・二句切れなどは、どういう意味なのか
- 句切れをどうやって見つけるのか
- 句切れがない短歌とは何か
- 句切れと切れ字の違い
短歌の「句切れ」とは?
まず、「句切れ」という言葉の意味を見てみましょう。
句切れとは、短歌の中で、意味や文の流れの切れ目
短歌は基本的に、5・7・5・7・7という五つのまとまりに分けて考えます。この五つのまとまりをそれぞれ「句(く)」といいます。
| まとまり | 呼び方 |
|---|---|
| 1つ目の5音 | 一句目 |
| 2つ目の7音 | 二句目 |
| 3つ目の5音 | 三句目 |
| 4つ目の7音 | 四句目 |
| 5つ目の7音 | 五句目 |
そして、この句のどこかで意味や文の流れに切れ目ができることを「句切れ」といいます。
「初句切れ」「二句切れ」ってどういう意味?
句切れには、初句切れ・二句切れ・三句切れ・四句切れという呼び方があります。これは、意味の切れ目がある場所が何句目の終わりなのかを表しています。
| 句切れ | 意味の切れ目がある場所 |
|---|---|
| 初句切れ(しょくぎれ) | 一句目の終わり |
| 二句切れ(にくぎれ) | 二句目の終わり |
| 三句切れ(さんくぎれ) | 三句目の終わり |
| 四句切れ(しくぎれ) | 四句目の終わり |
| 句切れなし(くぎれなし) | 途中に切れ目がなく、最後まで続く |
たとえば、意味の切れ目が二句目の終わりにあれば二句切れです。三句目の終わりなら三句切れです。
※この記事では二句切れと句切れなしの歌を例に見ていきます。ほかの3つも、探し方はまったく同じです。
では、実際の短歌を読んでみましょう。
句切れを見つけるには、まず歌の意味を考える
「何句切れですか?」と聞かれても、短歌を読み慣れていなければ、すぐには分かりませんよね。
では、句切れはどうやって見つけるのでしょうか。まず、その歌が何を歌っているのかを理解することから始めます。
STEP 1 分からない言葉を自分の分かる言葉にする
↓
STEP 2 歌全体で、何を歌っているのか考える
↓
STEP 3 意味や文の流れの切れ目を探す
↓
STEP 4 その場所が何句目の終わりなのか確認する
STEP 1は、古い言葉や知らない言葉があれば意味を調べる、ということです。STEP 2は、一部分だけではなく、歌全体を自分の言葉で説明してみる。STEP 3は、「ここなら『。』をつけられそうだな」というところを考えてみる。
ここまで来て初めて、STEP 4で「二句目の終わりだから、二句切れなんだ」と分かります。
では、実際にやってみましょう。
若山牧水の歌で、句切れを見つけてみよう
若山牧水の有名な短歌です。
※「白鳥」は「しらとり」と読みます。「かなしからずや」は「哀しからずや」と漢字で書かれることもあります。/若山牧水(1885-1928)。旅と酒を詠んだ歌人です。
5・7・5・7・7に分けると、こうなります。
白鳥は|かなしからずや|空の青|海のあをにも|染まずただよふ
では、この歌の句切れを見つけてみましょう。
STEP 1 分からない言葉を自分の分かる言葉にする
まず、意味が分かりにくい言葉を見てみます。
| かなしからずや | 悲しくないのだろうか |
| あを | 青 |
| 染まず | 染まらず、染まらないで |
| ただよふ | 漂っている |
ここまで分かれば、歌全体の意味が見えてきます。
STEP 2 この歌は、何を歌っているんだろう?
分かる言葉に置き換えて、歌全体を読んでみます。
白鳥は、悲しくないのだろうか。
青い空や青い海の中でも、青に染まらず、白いまま漂っている。
まずは、このように歌全体で何を歌っているのかをつかみます。
STEP 3 意味の切れ目を探す
では、意味の流れを見てみましょう。
「白鳥は、悲しくないのだろうか。」——ここで一つの問いが終わっています。
そのあとに、「青い空や青い海の中でも、青に染まらず、白いまま漂っている。」という白鳥の様子が続きます。
つまり、こう区切ることができます。
白鳥は、悲しくないのだろうか。 | 青い空や青い海の中でも、青に染まらず、白いまま漂っている。
STEP 4 その場所が何句目の終わりなのか確認する
「悲しくないのだろうか」にあたる「かなしからずや」は、何句目の終わりでしょうか。
白鳥は|かなしからずや|空の青|海のあをにも|染まずただよふ
二句目の終わりです。したがって、この歌は二句切れといいます。
正岡子規の歌を読んでみよう
次は、正岡子規の短歌です。
※「くれなゐ」は「くれない」、「やはらかに」は「やわらかに」と読みます。/正岡子規(1867-1902)。俳句と短歌の両方を新しくした人です。
5・7・5・7・7に分けると、こうなります。
くれなゐの|二尺伸びたる|薔薇の芽の|針やはらかに|春雨のふる
では、この歌も同じように読んでみましょう。
STEP 1 分からない言葉を自分の分かる言葉にする
| くれなゐ | 紅色 |
| 二尺 | 昔の長さの単位。約60センチ |
| 薔薇 | バラ |
| 針 | ここではバラのとげ |
| やはらかに | やわらかく |
| 春雨 | 春に降る雨 |
※二尺は約60センチ。ひざの高さくらいまで伸びた薔薇の芽、ということになります。
STEP 2 この歌は、何を歌っているんだろう?
分かる言葉に置き換えて、歌全体を読んでみます。
紅色で、60センチほどに伸びた薔薇の芽の、
針のようなとげがやわらかく、そこに春の雨が降っている。
このように、歌全体の様子を自分の言葉でつかんでみます。
※気づきましたか。途中で「。」を打つところがありません。さきほどの牧水の歌は、訳の真ん中に「。」がありました。この違いが、次のSTEPで効いてきます。
STEP 3 意味の切れ目を探す
もう一度、5・7・5・7・7に分けた形を見てみます。
くれなゐの|二尺伸びたる|薔薇の芽の|針やはらかに|春雨のふる
ここで、「くれなゐの」だけでは、まだ意味が終わっていません。
「紅色の……何だろう?」と、次の「二尺伸びたる」へ続きます。
そこまで読んでも、「紅色で、60センチほどに伸びた……何だろう?」と、まだ続きます。
次の「薔薇の芽の」まで来て、ようやく何について歌っているのか分かります。
でも、ここでも文は終わりません。「薔薇の芽の針……」と、次の「やはらかに」へ続いていきます。
さらに、「針やはらかに」まで来ても、「やわらかく……どうしたのだろう?」と続きます。
そして最後の「春雨のふる」まで読んで、ようやく歌の文が終わります。
STEP 4 句切れがあるか確認する
この歌は、5・7・5・7・7には分かれています。でも、一句目の終わりでも、二句目でも、三句目でも、四句目でも、意味の切れ目がありません。
最後まで、ひとつづきの文になっています。
そのため、この歌は句切れなしです。
句切れは、短歌の意味をつかむ手がかり
二つの歌を並べると、こうなります。
| 作者 | 意味の切れ目 | 句切れ |
|---|---|---|
| 若山牧水 | 二句目の終わり(かなしからずや) | 二句切れ |
| 正岡子規 | 最後まで切れ目がない | 句切れなし |
句切れの位置によって、意味だけでなく、短歌を読んだときのリズムや印象も変わります。
短歌を読むときは、5・7・5・7・7の音だけでなく、「ここに意味の切れ目があるな」というところにも注目してみてください。句切れを知ることで、短歌の意味の流れをつかみやすくなります。
「句切れ」と「切れ字」は同じ?
ここは、少し混同しやすいところです。
句切れは、意味や文の流れの切れ目のことです。
一方、切れ字は、主に俳句で使われる言葉です。「や」「かな」「けり」などがあり、意味を強めたり、余韻を生んだりする働きをします。
切れ字があるから必ず句切れになる、というわけではありません。
句切れ = 意味の区切り
切れ字 = 表現の働きをする言葉
と考えると分かりやすいでしょう。
まとめ
句切れとは、短歌の中で、意味や文の流れの切れ目のことです。
句切れを見つけるときは、この順番で読んでみましょう。
歌の意味をつかむ
↓
意味の切れ目を探す
↓
何句目の終わりか確認する
そうすると、「意味の切れ目が二句目の終わりにあるから、二句切れ」というように、句切れが分かるようになります。
短歌を読むときは、音の数だけでなく、意味の流れにも注目してみてください。