短歌の表現技法一覧
意味・例・効果をわかりやすく解説
〜日々、三十一音のひとりごと文藝〜
短歌を読んでいて、「この言い方、なんだか心に残るな」と思ったことはありませんか?
たとえを使う。言葉の順番を入れ替える。同じ言葉をくり返す。
こうした言葉の工夫を、表現技法といいます。
学校の国語でも習いますが、名前だけ覚えても、ちょっと分かりにくいですよね。
実は私も、表現技法を考えて短歌を作ったことはありませんでした。
でも、あとから自分の歌を読み返してみたら、ちゃんと使っていたのです。
この記事で分かること
- 短歌の表現技法の一覧と、それぞれの意味
- 実際の短歌で、どう使われているか
- 使うと、どんな効果があるか
- 自分の歌で試してみる方法
- 古典和歌の技法(枕詞・掛詞・縁語・序詞・折句・係り結び)
- 技法を見つける練習問題
読みたいところから、どうぞ
1.短歌の表現技法とは?
表現技法とは、見たものや感じたことを、より伝わるように表すための言葉の工夫です。
たとえば、雨の日の駅で、たくさんの傘が開いているのを見たとします。
「傘がたくさん並んでいる」
と書くこともできます。でも、
「傘の花が咲く」
と書くと、色とりどりの傘が、花のように開いている景色が浮かんできます。
同じ景色でも、言葉の選び方で、読む人が思い浮かべるものが変わるのです。
ただし、表現技法は、使わなければいけないものではありません。
技法を使わなくても、気持ちが伝わる短歌はたくさんあります。表現技法は、伝えたいことを伝えるための道具のひとつです。
2.短歌の表現技法一覧
まずは、学校の国語でもよく出てくる表現技法を一覧で見てみましょう。
| 表現技法 | 読み方 | 意味 | 短い例 |
|---|---|---|---|
| 直喩 | ちょくゆ | 「〜のように」を使ってたとえる | 小舟のように |
| 隠喩 | いんゆ | 「〜のように」を使わずにたとえる | 傘の花 |
| 擬人法 | ぎじんほう | 人ではないものを、人のように表す | 春を連れてく |
| 体言止め | たいげんどめ | 最後を名詞で止める | 道を説く君 |
| 倒置法 | とうちほう | ふつうの言葉の順番を入れ替える | 会いたいよ、きみに |
| 反復法 | はんぷくほう | 同じ言葉をくり返す | はたらけど はたらけど |
| 対句法 | ついくほう | 似た形の言葉を、対にして並べる | 朝には光、夜には影 |
| 省略法 | しょうりゃくほう | あえて言葉を省いて、想像させる | 春はあけぼの |
それぞれの例は、このあと3章でくわしく説明します。古典和歌の技法(枕詞・掛詞など)は、6章でまとめて紹介します。
3.ひとつずつ、例で見てみよう
表現技法は、教科書の中だけにあるものではありません。自分で作った短歌を読み返すと、思いがけず見つかることもあります。
直喩(ちょくゆ)
「〜のように」「〜みたいに」を使って、あるものを別のものにたとえる方法です。
たとえば「雪のように白い花」。花の白さを、雪にたとえています。
効果:読む人が知っているものに重ねるので、様子を思い浮かべやすくなります。
短歌での例は、5章の書き換えで、実際に作ってみます(「小舟のように」)。
隠喩(いんゆ)
「〜のように」を使わずにたとえる方法です。暗喩(あんゆ)ともいいます。
私の歌の「傘の花」がそうです(くわしくは4章で)。
効果:「傘が花のようだ」と説明するより、短い言葉で、景色をぱっと見せられます。
擬人法(ぎじんほう)
人ではないものを、人のように表す方法です。
私の歌の「春を連れてく」がそうです(くわしくは4章で)。
効果:風や花などが、生きているように感じられます。
体言止め(たいげんどめ)
最後を名詞で止める方法です。
やは肌の あつき血汐に ふれも見で さびしからずや 道を説く君
※「血汐」は「ちしお」と読みます。
意味:このやわらかな肌の、熱い血に触れてもみないで。さびしくないのですか、道理ばかり説いているあなたは。
この歌は、「君」という名詞で終わっています。
効果:言い切らずに「君」で止めることで、問いかけられている相手の姿が、最後に心に残ります。
※この歌は有名な短歌と歌人でも紹介しています。
倒置法(とうちほう)
ふつうの言葉の順番を入れ替える方法です。
たとえば、ふつうに言えば、
「きみに会いたい」
となるところを、
「会いたいよ、きみに」
と、順番を入れ替えます。
効果:伝えたい言葉を先に置くことで、「会いたい」という気持ちが強く伝わります。
反復法(はんぷくほう)
同じ言葉や表現を、くり返す方法です。
はたらけど はたらけど猶 わが生活 楽にならざり ぢつと手を見る
※「猶」は「なお」、「生活」は「くらし」、「ぢつと」は「じっと」と読みます。石川啄木の歌集『一握の砂』(1910年)の歌です。もとの歌集では、3行に分けて書かれています。
意味:働いても働いても、それでもまだ暮らしは楽にならない。じっと自分の手を見る。
「はたらけど」が2回くり返されています。
効果:くり返すことで、働き続けても報われない、つらさや疲れが強く伝わります。
※短歌は1行で書いても、何行かに分けて書いてもかまいません。書き方については短歌とは?で説明しています。
対句法(ついくほう)
似た形の言葉を、対にして並べる方法です。
たとえば「朝には光、夜には影」。「〇〇には△△」という同じ形を並べています。
効果:リズムが整い、二つのものの違いや、つながりが際立ちます。
短歌での例は、7章の練習問題で探してみてください。
省略法(しょうりゃくほう)
あえて言葉を省いて、読む人に想像させる方法です。
よく知られた例が、『枕草子』の書き出し「春はあけぼの」です。
「春は、夜明けが趣深い(をかし)」というように、あとに続く評価の言葉が省かれていると説明されます。
効果:全部を言わずに止めることで、夜明けの美しさや趣を、読む人が自分で感じ取れる表現になっています。
短歌は31音しかありません。全部は書けないからこそ、省略が生きるのです。
押韻(おういん)について
同じ音や似た音をそろえて、響きを作る方法です。詩ではよく使われますが、短歌の表現技法としては、あまり中心ではありません。
短歌を声に出して読んで、音の響きが気持ちいいと感じたら、そこに音の工夫があるかもしれません。
4.自分の短歌から表現技法を見つけてみよう
表現技法というと、名前を覚えて、意識して使うものだと思うかもしれません。
でも私は、技法を考えて短歌を作ったことはありませんでした。
あとから読み返してみたら、自分の歌にも、ちゃんと表現技法があったのです。
「傘の花」— 隠喩
雨の駅 傘の花咲く 朝の道 今日はあなたに 会える気がする
この歌は、はじめ「雨の駅 傘の花咲く 朝の道」という5・7・5から生まれました。そこに7・7を足して、景色だけでなく、そのときの気持ちも入れた一首です(短歌と俳句の違いで作った歌です)。
朝の雨の日。
雨なのに、気持ちはなぜか晴れやか。
色とりどりの傘が、花のように雨を浴びて、気持ちよさそうにしている。
そして、今日は会えるかもしれない。
そんなウキウキした気持ちで作った歌です。
「傘の花」は、傘を花にたとえた表現です。「〜のように」を使っていないので、隠喩です。
「傘の花」は昔からよく使われる言い方ですが、作ったときは、技法だとは思っていませんでした。この朝の景色には、この言葉がぴったりだと思っただけです。
「春を連れてく」— 擬人法
春風が 桜の花を 吹き抜けて いつもの道に 春を連れてく
いつもと変わらない道。
でも、季節は少しずつ移り変わっています。
桜の花びらを連れて、風が吹いてくる。風が、春を連れてきてくれた。そう感じた歌です。
「連れてく」は、本当は人がすることです。それを風がしているように書いているので、擬人法です。
技法は、あとから見つかる
見た景色や、そのとき感じたことを、言葉にしてみる。
読み返してみると、そこに技法が見つかることがあります。
技法の名前を知っていると、自分の歌を読み返すのが、少し楽しくなります。
▶ ほかの歌は日々の一首に並べています。
5.一首を書き換えて、表現の違いを試してみよう
今度は、技法を使って、実際に書き換えてみます。
もとにするのは、私の歌の中でいちばん素直な一首です。
春の風 窓からそっと 風が来て 机の上の 紙を揺らした
春の風が窓から入ってきて、机の上の紙を揺らした。それだけの歌です。
体言止めにしてみる
春の風 窓からそっと 吹き込んで 机の上の 一枚の紙
最後を「紙」という名詞で止めました。
「揺らした」と説明しなくても、風を受けた一枚の紙が、最後に目に浮かびます。
直喩を使ってみる
春の風 窓からそっと 吹き込んで 小舟のように 紙が揺れてる
紙を、小舟にたとえました。
机の上が、小さな海のように見えてきませんか。
擬人法を使ってみる
春の風 窓からそっと 忍び込み 机の上の 紙を揺らした
「忍び込む」は、人がこっそり入ってくるときの言葉です。
風が、いたずらっ子のように部屋に入ってきた感じになりました。
同じ景色でも、言葉をひとつ変えるだけで、伝わり方が変わりますね。
どれが正解ということはありません。自分が伝えたい景色や気持ちに合うものを選べばいいのです。
作った歌の言葉を見直す方法は、短歌の推敲とは?で紹介しています。
6.古典和歌で使われる表現技法
昔の和歌には、和歌ならではの技法があります。教科書にもよく出てきます。
枕詞(まくらことば)
決まった言葉の前に置かれる、決まった言葉です。多くは5音です。
| 枕詞 | かかる言葉 |
|---|---|
| あしひきの | 山 |
| ひさかたの | 光・天(あめ)・空 |
| たらちねの | 母 |
| ちはやぶる | 神 |
枕詞そのものには、はっきりした意味がないことが多いです。歌の調子を整えたり、雰囲気を作ったりする働きがあります。
かきつばたの歌で、技法をまとめて見てみよう
『伊勢物語』の「東下り(あずまくだり)」に出てくる歌です。技法がたくさん入っていることで有名です。
からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ
意味:着なれた唐衣(からころも)のように、慣れ親しんだ妻が都にいるので、はるばるやって来た旅のつらさを、しみじみと思う。
都を離れて旅をしている人が、かきつばたの花を見て、都に残した妻を思って詠んだ歌です。
折句(おりく)
各句の最初の音をつなげると、別の言葉になる技法です。
からころも/きつつなれにし/つましあれば/はるばるきぬる/たびをしぞおもふ
頭の音をつなげると「か・き・つ・は・た」。
「は」で、「ば」じゃないの?と思いましたか?
昔の和歌は、濁点(゛)をつけずに書くのがふつうでした。そのため折句では、「は」と「ば」のような、濁点のあるなしは区別しません。こうして「かきつばた」になります。
花の名前を、歌の中にこっそり隠しているのです。
掛詞(かけことば)
ひとつの言葉に、二つの意味を重ねる技法です。
| 言葉 | ひとつめの意味 | ふたつめの意味 |
|---|---|---|
| なれ | 慣れ(親しむ) | 萎れ(着なれて、やわらかくなる) |
| つま | 妻 | 褄(着物のすその端) |
| はるばる | 遥々(遠くまで) | 張る張る(着物を洗って張る) |
| き(きぬる) | 来(やって来た) | 着(着る) |
妻と旅の話をしながら、着物の話も重なっているのです。
※ふたつめの意味(着物に関係する意味)は、このあと説明する縁語にもなっています。この歌では、掛詞と縁語が重なり合っているのです。
縁語(えんご)
関係の深い言葉を、ひとつの歌の中に使う技法です。
この歌では、「からころも(衣)」に関係のある、
き(着)・なれ(萎れ)・つま(褄)・はる(張る)
が使われています。どれも着物に関係する言葉です。
序詞(じょことば)
ある言葉を導き出すために、前に置く言葉のまとまりです。枕詞と違って、長さも中身も自由に作られます。
この歌の序詞は、どこまでを序詞とするかによって、説明の仕方が異なる場合があります。
- 「からころも きつつ」が、「なれ」を導く
- 「からころも きつつなれにし」が、「つま」を導く
また、「からころも」を、「着る」にかかる枕詞とする説明もあります。
学校で習うときは、使っている教科書の説明に合わせてください。
係り結び(かかりむすび)
「ぞ・なむ・や・か・こそ」という言葉(係助詞)があると、文の終わりの形が変わる決まりです。
この歌では「たびをしぞ おもふ」の「ぞ」に合わせて、最後の「おもふ」が連体形で結ばれています。
※「おもふ」は、ふつうの終わり方(終止形)と連体形が同じ形なので、見た目は変わりません。
係り結びには、その部分を強める働きがあります。
本歌取り(ほんかどり)
昔の有名な歌の言葉を取り入れて、新しい歌を作る技法です。もとの歌を知っていると、新しい歌がもっと深く味わえます。
まとめ:かきつばたの歌の技法
| 技法 | 見分け方 | かきつばたの歌では |
|---|---|---|
| 折句 | 各句の頭の音をつなげると、別の言葉になる | か・き・つ・は・た |
| 掛詞 | ひとつの言葉に、二つの意味が重なる | なれ・つま・はるばる・き(きぬる) |
| 縁語 | 関係のある言葉が、ひとつの歌に集まる | 着・萎れ・褄・張る(衣の仲間。掛詞と重なる) |
| 序詞 | 後の言葉を導く、前置きの言葉のまとまり | 「からころも きつつ」など(説明が分かれる) |
| 枕詞 | 決まった言葉の前に置く、決まった言葉 | 「からころも」を「着る」にかかる枕詞とする説明もある |
| 係り結び | 「ぞ」などがあると、文末の形が決まる | ぞ → おもふ(連体形) |
この歌のように、ひとつの言葉が、いくつもの技法に関係していることもあります。
※古典和歌の技法は、教科書や先生によって説明の仕方が少し違うことがあります。テストや宿題では、使っている教科書の説明を優先してください。
7.短歌の表現技法を見つける方法
短歌の中から技法を見つけるときは、次の順番で考えてみましょう。
- 気になる言葉に印をつける。「〜のように」、くり返されている言葉、人のような動きをしている言葉などを探します。
- ふつうの言い方と比べる。ふつうなら、どういう順番、どういう言い方になるか考えます。
- 技法の名前を当てはめる。2章の一覧を見ながら、合うものを探します。
- 効果を考える。その工夫で、何が、どう伝わりやすくなっているかを、自分の言葉で書きます。
「技法の名前」と「効果」は、分けて考えるのがコツです。
「擬人法です」だけでは、効果の説明にはなりません。「風を人のように表すことで、季節が運ばれてくる様子を生き生きと感じさせる」のように、何を・どう感じさせるかまで書きましょう。
あわせて、どこで意味が切れているか(句切れ)も見ておくと、歌の読み方が深まります。→ 短歌の句切れとは?
練習問題
問題1:どんな表現技法が使われているでしょう?
白鳥は かなしからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ
※「白鳥」は「しらとり」、「あを」は「あお」と読みます。
ヒント:3句目と4句目に注目してみてください。
答えを見る
答え:対句法
「空の青」と「海のあを」が、「〇〇の青」という同じ形で並んでいます。
空も海も青。青を重ねることで、その中にいる白い鳥が、いっそう際立ちます。
もうひとつ、「青」の中の「白」という色の対比も読み取れます。白と青の対比が、白鳥の孤独やさびしさを感じさせます。
問題2:最後の言葉に注目すると、どんな表現技法が使われているでしょう?
願はくは 花の下にて 春死なむ その如月の 望月のころ
※「願はくは」は「ねがわくは」、「如月」は「きさらぎ」、「望月」は「もちづき」と読みます。
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答え:体言止め
最後が「ころ」という名詞で終わっています。
「満月のころに、死にたい」と言い切らずに止めることで、満月の夜の桜の景色が、余韻として残ります。
問題3:どんな表現技法が使われているでしょう?
花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
ヒント:「ふる」と「ながめ」を、別の漢字で書けないか考えてみてください。
答えを見る
答え:掛詞(「ふる」と「ながめ」)
- ふる:雨が「降る」と、年月が「経る(年をとる)」
- ながめ:「長雨」と、「眺め(もの思いにふける)」
桜の話をしながら、自分が年をとったさびしさも重ねているのです。くわしくは有名な短歌と歌人で紹介しています。
8.よくある質問
短歌の表現技法には、どんなものがありますか?
直喩、隠喩、擬人法、体言止め、倒置法、反復法、対句法、省略法などがあります。古典和歌では、枕詞、掛詞、縁語、序詞、折句、本歌取りなども学びます。
体言止めとは何ですか?
最後を名詞(体言)で止める表現です。言い切らないので、余韻が残ったり、最後の言葉が印象に残ったりします。
比喩と擬人法の違いは?
比喩は、あるものを別のものにたとえる表現です(直喩・隠喩)。擬人法は、人ではないものを人のように表す表現です。擬人法を比喩の一種とする考え方もあります。
表現技法の効果は、どう書けばいいですか?
「何を」「どう感じさせるか」まで書きます。たとえば「最後を名詞で止めることで、〇〇の景色を余韻として残している」のように書きます。
表現技法を使わないと、いい短歌になりませんか?
そんなことはありません。技法を使うこと自体が目的になると、かえって伝わりにくくなることもあります。まず思ったことを言葉にして、読み返すときに技法を試してみるのがおすすめです。
俳句の表現技法とは違いますか?
たとえや擬人法、体言止めなどは、俳句でも使われます。俳句には「切れ字(や・かな・けり)」など、俳句ならではの技法もあります。違いは短歌と俳句の違いで整理しています。
9.まとめ
短歌の表現技法には、
- たとえる(直喩・隠喩)
- 人のように表す(擬人法)
- 終わり方や順番を工夫する(体言止め・倒置法)
- くり返す・並べる(反復法・対句法)
- あえて書かない(省略法)
などがあります。古典和歌には、枕詞・掛詞・縁語・序詞・折句など、和歌ならではの技法もあります。
名前を覚えるだけでなく、実際の短歌の中で見つけてみると、ぐっと分かりやすくなります。
私も、自分の歌を読み返して、はじめて技法に気づきました。
まずは一首作ってみて、あとから読み返してみてください。あなたの歌にも、まだ気づいていない表現の工夫が見つかるかもしれません。