短歌の推敲とは?

推敲の仕方とポイントを例で紹介
〜日々、三十一音のひとりごと文藝〜

公開日: 2026年10月12日

短歌の推敲とは?|推敲の仕方とポイントを例で紹介

短歌を一首作ってみたけれど、

「なんだかしっくりこない」
「言いたいことはあるけれど、うまくまとまらない」
「5・7・5・7・7にはなったけど、これでいいのかな?」

そんなことはありませんか?

そんなときにするのが「推敲(すいこう)」です。

推敲とは、作った文章や作品を読み返し、言葉を変えたり削ったりしながら、よりよい表現に整えていくこと。

短歌の場合も、最初にできた一首をそのまま完成とせず、何度か読み返してみることで、言いたかったことがより自分らしい言葉になっていくことがあります。

この記事では、短歌を作り始めたばかりの方にも分かるように、推敲の仕方とチェックしたいポイントを紹介します。

この記事で分かること

  • 短歌の「推敲」とは何か
  • 「推敲」という言葉の由来
  • 推敲するときに確認したい5つのポイント
  • 実際の一首を推敲すると、どう変わるのか
  • 推敲に正解はあるのか
  • 一人で迷ったときと、投稿するときの注意

短歌の「推敲」とは?

短歌の推敲とは、一度作った短歌を読み返し、言葉や表現を見直すことです。

たとえば、

と考えながら、一首を少しずつ整えていきます。

「最初から完璧な短歌を作らなければいけない」と思う必要はありません。

作ってから直す。

これも短歌づくりの大切な時間です。

推敲という言葉の由来

「推敲」は、中国の昔の話から生まれた言葉です。

唐の時代の詩人・賈島(かとう)は、ロバに乗りながら詩を作っていました。

「僧は推す月下の門」という句の「推す(おす)」を、「敲く(たたく)」にするか迷っていたのです。

考えこむうちに、都の長官だった韓愈(かんゆ)の行列にぶつかってしまいます。

わけを話すと、韓愈はしばらく考えて「敲くがいい」と答えました。

この話から、言葉を何度も考え直すことを「推敲」と呼ぶようになりました。

たった一文字で、ここまで悩む。

短歌の推敲も、同じように一つの言葉と向き合う時間です。

短歌を推敲するときのポイント

では、実際に何を見直せばいいのでしょうか。

まずは、次の5つを確認してみましょう。

全部直さなくていいよ。一つの言葉から見てみよう。

1.本当に言いたかったことが入っている?

最初に確認したいのは、「自分は何を歌いたかったのか」です。

たとえば、

帰り道 今日も疲れて 空を見る 明日(あした)は少し 楽になれたら

こんな短歌を作ったとします。

言いたいことは、

「仕事で疲れた帰り道、空を見上げて、明日は少し楽になればいいなと思った」

ということ。

ここで、もう一度自分に聞いてみます。

「私は何を見て、何を感じたんだろう?」

仕事で疲れていたことだけでなく、空を見上げたときのことも思い出してみます。

どんな空だったのでしょうか。夕焼けがきれいだったのかもしれません。雲が流れていたのかもしれません。

その空を見たとき、どんな気持ちになったのでしょうか。

ただ疲れていただけではなく、空を見たことで、少し気持ちが軽くなったのかもしれません。

自分が見たものや感じたことを振り返ると、歌にしたかったものが少しずつはっきりしてくることがあります。

推敲は、言葉をきれいにする作業だけではありません。

自分が最初に感じたことに戻る作業でもあります。

2.説明しすぎていない?

自分の気持ちを、そのまま言葉にするのも一つの表現です。

たとえば、

悲しくて 涙がこぼれ ひとりきり 君なき部屋に 夜(よる)が更けてく

気持ちを直接言葉にしていますね。

では、悲しいという言葉を使わず、身の回りの様子で表現するとどうなるでしょうか。

君の席 空いたまんまで 食卓に 冷めたスープと 雨音ばかり

空いたままの席、冷めたスープ。そこから、誰かがいなくなった寂しさを感じる人もいるかもしれません。

どちらが優れているということではありません。

気持ちを直接伝えるのか、情景を通して伝えるのか。自分が表現したいことに合った方法を探してみましょう。

3.言葉を一つずつ見てみる

一首を読み返したら、言葉を一つずつ見てみます。

「この言葉でなければいけないかな?」
「別の言葉にしたら、気持ちはどう変わるだろう?」

そんなふうに考えてみるのです。

たとえば、「楽になれたら」という言葉。

気持ちが軽くなってほしいのか、今の状況から抜け出したいのか、明日を少しだけ期待しているのか。

似た意味の言葉でも、伝わる気持ちは少しずつ違います。

最初に作った歌を思い出しながら、自分の感覚に近い言葉を探してみましょう。

言葉を変えることで、最初はうまく表せていなかった気持ちが、少しずつ見えてくることもあります。

4.音数を確認する

短歌の基本的な形は、5・7・5・7・7の31音です。

推敲して言葉を変えたときは、音数も確認してみましょう。

意味はよくなったと思っても、音数が変わっていることがあります。

音数を数えるときは、文字数ではなく、実際に声に出したときの音を数えます。

詳しくはこちらの記事で紹介しています。

▶ 短歌の音数の数え方

▶ 短歌の字余り・字足らずとは?

短歌は、必ずしも31音に収めなければいけないわけではありません。意図して音数を変える表現もあります。

まずは基本の形を知り、そのうえで自分の表現を考えてみましょう。

5.声に出して読んでみる

最後に、短歌を声に出して読んでみます。

目で読んでいると気づかなかったことも、声に出すと見つかることがあります。

こんな違和感も、推敲の手がかりになります。

声に出して読んでみて、気になるところがあれば、もう一度言葉を見直してみましょう。

実際に一首を推敲してみよう

ここからは、先ほどの5つのポイントを使って、一首を推敲してみます。

最初の歌はこちらです。

帰り道 今日も疲れて 空を見る 明日(あした)は少し 楽になれたら

仕事帰りに疲れて、空を見上げる。明日は少し楽になっていたらいいな。

そんな気持ちを込めた歌です。

この歌を、先ほどのポイントに沿って見直してみましょう。

1.本当に言いたかったことを振り返る

まず、歌を作ったときのことを思い出します。

私なら、こんな気持ちだったと思います。

疲れていたけれど、ふと見上げたら、きれいな夕焼けを見ることができた。夕焼けから元気をもらったような気がした。明日は気持ちだけでも軽くなったらいいな。

そのときの景色を歌に入れてみると、伝えたいことが変わってくるかもしれません。

2.説明を減らしてみる

元の歌には「今日も疲れて」とあります。

疲れていることを直接伝える表現です。

でも、疲れた気持ちを説明する代わりに、空を見上げたときの景色を描くこともできます。

たとえば、「今日も疲れて」を「夕焼けの色」に変えてみます。

疲れたという説明を少し減らして、そのとき目にしたものを描く形です。

あわせて、「空を見る」も「見上げれば」に変えます。「夕焼けの色」が入ったので、「空」と書かなくても、見上げた先に夕焼けが広がっていることが伝わります。

ここまでの1と2で、景色を入れて、説明を減らしました。歌はこんなふうに変わります。

帰り道 夕焼けの色 見上げれば 明日(あした)は少し 楽になれたら

3.言葉を探してみる

次に、下の句を見てみます。

元の歌は「楽になれたら」です。

この言葉には、明日は少しでも楽になってほしい、という願いが感じられます。

では、「軽くなるかな」に変えたらどうでしょう。

「楽になれたら」は願いに近く、「軽くなるかな」は、明日は少し気持ちが軽くなるだろうか、と自分に問いかけるような表現になります。

どちらが正解ということではありません。

自分がそのときに感じていたことに近い言葉を選びます。

「楽になれたら」を「軽くなるかな」に変えると、こうなります。

帰り道 夕焼けの色 見上げれば 明日(あした)は少し 軽くなるかな

4.言葉を変えたら音数を確認する

言葉を変えたら、音数も確認します。

推敲前推敲後
帰り道(5)帰り道(5)
今日も疲れて(7)夕焼けの色(7)
空を見る(5)見上げれば(5)
明日(あした)は少し(7)明日(あした)は少し(7)
楽になれたら(7)軽くなるかな(7)

どちらも、5・7・5・7・7の31音です。

言葉を変えたことで、歌の形を保ちながら、表現する内容を変えることができました。

5.推敲前と後の2首を声に出して読んでみる

最後に、二つの歌を声に出して読んでみます。

「今日も疲れて」と「夕焼けの色」。
「空を見る」と「見上げれば」。
「楽になれたら」と「軽くなるかな」。

声に出してみると、言葉の響きや、歌全体から受ける印象の違いにも気づくかもしれません。

短歌「帰り道 今日も疲れて 空を見る 明日(あした)は少し 楽になれたら」を縦書きの短冊に書いたもの
推敲前
短歌「帰り道 夕焼けの色 見上げれば 明日(あした)は少し 軽くなるかな」を縦書きの短冊に書いたもの
推敲後

今回の推敲では、疲れていることを直接伝える歌から、夕焼けを見上げた景色と、明日への小さな期待を描く歌に変わりました。

ただし、推敲後の歌が、誰にとっても正解というわけではありません。

元の歌のほうが自分の気持ちに近いと思ったら、元に戻しても大丈夫です。

大切なのは、言葉を変えることそのものではなく、変えてみたことで、自分の気持ちに近づけたかどうかです。

推敲するときは全部直さなくていい

歌を読み返していると、あちこち気になってしまうことがあります。

でも、一度に全部直そうとしなくても大丈夫です。

「この言葉だけ変えてみよう」
「この部分は今のままがいい」

そんなふうに、一つずつ考えてみましょう。

いろいろ試した結果、最初の歌に戻ることもあります。それも立派な推敲です。

言葉を変えてみたからこそ、元の表現のよさに気づけることもあります。

推敲に正解はある?

推敲には、誰にとっても同じになる一つの正解があるわけではありません。

音数や言葉の意味を確認することは大切です。でも、どんな言葉を選び、どんな気持ちを表現するかは、作る人によって違います。

誰かの歌を参考にすることはできますが、その人の表現をそのまま目指さなくてもいいのです。

自分が何を感じて、何を伝えたかったのか。

そこに立ち返りながら、自分の言葉を探してみましょう。

一晩置いてから読むのもおすすめ

作った直後には、よくできたと思っていた歌でも、時間を置いて読み返すと、違う印象になることがあります。

逆に、作ったときには気になっていた言葉が、翌日にはしっくりくることもあります。

すぐに完成させようとせず、一晩置いてから読み返してみるのもおすすめです。このように時間を置くことを「寝かせる」ともいいます。

少し時間を置くことで、作ったときとは違う目線で、自分の歌を見直せるかもしれません。

推敲は自分の言葉を探す時間

短歌の推敲は、きれいな言葉に置き換えることだけではありません。

自分が見た景色や、そのときに感じたことを思い出しながら、気持ちに近い言葉を探していく時間です。

一度で完成しなくても大丈夫。

言葉を変えてみる。声に出してみる。元に戻してみる。

その繰り返しの中で、自分にとってしっくりくる一首に近づいていけたらいいですね。

一人で迷ったときは

一人で迷ったときは、歌会や短歌教室で人に見てもらう方法もあります。もっと手軽にAIを使う方法もありますが、短歌の賞や新聞の歌壇には、AIを使った歌を応募できない決まりのところがあります。

投稿するときは、応募先の決まりを必ず確認してください。

まとめ|短歌を推敲するときの5つのポイント

短歌を推敲するときは、次の5つを意識してみましょう。

この5つのポイントは、俳句を推敲するときにも使えます。

全部を一度に直す必要はありません。

自分の気持ちに近い言葉を探しながら、少しずつ見直してみましょう。

最初に作った歌も、推敲して変わった歌も、どちらも自分の大切な一首です。

「私は本当に、こう言いたかったのかな?」と、自分の短歌に聞いてみてください。

推敲して仕上がった一首は、投稿してみるのもいいかもしれません。

▶ 短歌はどこに投稿できる?

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